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評価:
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日経BP社
¥ 1,490
(2011-06-08)
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せっかくの週末をイヤ〜な気分で過ごした木村です。おはようございます。
今回のOSS-DB認定試験の話が持ち上がる前、つまり2011-02より前は、私はLPI殿およびLPI-Japan殿には比較的良い印象を持っていました。毎月買う日経Linuxの背表紙広告にも「世界最大」「国際認定制度」「中立公正」とあり、Linux技術者認定制度(Linux Professional Institute Certification、つまりこれの略称がLPICです)としては、妥当なものであるという認識だったからです。
例えば日経Linux今月号(2011-07)のNewsフラッシュにでていたLPIC試験開発責任者インタビュー(p.13)では、以下のようなやりとりがあります。
Q.試験問題はどのようなプロセスで作成されるのか
A.スポンサーと協議をした後、広く意見を聞くJTA(業務分析)という調査プロセスを解して、出題範囲を決める。最終的に1500人くらいからの意見を取り入れて業務上の重要度などで重み付けを行い、問題を作成する。
なるほど、これなら「中立公正」であるかもしれない。ご苦労も伺えます。
翻って、今回のOSS-DB試験はどうでしょう。LPI-Japan殿がおこなうということで、既存のLPICと同様なイメージを持ちそうになりますが、そもそも違うものであることは認識しておかねばならないようです。
1. OSS-DB認定試験はLPI-Japan殿がおこなう日本ローカルの日本語による試験です。
LPICはLPI殿、および各国のLPI関連団体がおこなうワールドワイドなものですが、OSS-DB認定試験はそうではありません。つまり少なくともLPICのような「国際認定制度」ではありません。当然「世界最大」ともいえません。
2. LPICのような開発プロセスは取られていません。
OSS-DB認定試験は、私が目にした2011-02時点で(つまりSRA殿やLPI-Japan殿関係者以外が初めて目にした時点で)PostgreSQL CEありきの認定試験です。そのため、PostgreSQL的には「中立公正」なのかもしれませんが、少なくともOSS-DB的に「中立公正」ではありません。
上記で述べられているJTAという調査プロセスも、またその内容について、ボランティアもパブリックコメントも求めたものではありません。これまでに知り得る情報でみる限りは、旧PostgreSQL CEから、対応バージョンを8.x -> 9.x にバージョンアップし、オープンデータベースに触れるパートを(全体の分量からするとほんの少し)追加しただけです。
3.LPICの名称と対象であるLinuxは妥当ですが、OSS-DB認定試験の名称と対象は妥当とは思えません。
Linuxには皆さんもご存じの通り、数多くのディストリビューションがあります。しかしながらLPI殿のLPICは「特定メーカーの製品・技術に依存しない」ことに重点が置かれています。そのためRHEL, SuSE, Debianなどディストリビューションに特化したものは試験内容にはない(はずです)。当初は疑問の声もあがりましたが10年の歳月が、その選択が正しかったことを証明しています。まさに'Linux'の認定試験です。「中立公正」だと私も思います。
しかし、これは名前がLPICだからこそ、そう思えるわけで、
これがOSS-OS認定試験であればどうでしょうか? 数あるオープンソースのオペレーティングシステムの中で言えば、Linuxに特化したものです。Linuxに特化した上で、そのLinuxの中で「中立公正」だから、LPICなのではないでしょうか?
翻ってOSS-DBです。OSS-DBは少なくとも現時点では「特定のメーカの製品・技術に依存したもの」です。つまりPostgreSQLに依存したものです。数あるPostgreSQLとバリエーション(PostgreSQL本家, EnterpriseDB, PowerGres, PowerGres Plus, etc)の中で「中立公正」を保っているように見えますので、認定試験の名称がPostgreSQL CEであれば「中立公正」であると思いますが、実際の名称はOSS-DBです。わかりやすくすると、以下の階層です。
Linuxの場合: (i)OSS-OS→
(ii)OSS-OSのうちのLinux→(iii)Linuxのバリエーション
PostgreSQLの場合: (i)OSS-DB→
(ii)OSS-DBのうちのPostgreSQL→(iii)PostgreSQLのバリエーション
今回のOSS-DB認定試験も、
LPICと同様に(ii)の階層で(ii)の名称を使う限りは「中立公正」だと思います。元々SRA殿が工数をかけてPostgreSQL 7.x -> 8.xと続けてきた認定試験なのですから。それを今回LPI-Japan殿が意図的にOSS-DBを名乗るために、ややこしい話になるし私が憤慨しているわけです。
前回も書きましたが、大切なことなので、再度書きます。
「今回あらためて思うのですが、OSS-DB技術者認定試験の名称が「PostgreSQL CE」のままであれば、もしくはLPIC試験シリーズの新試験、LPIC-DB試験であれば、上記のことはLPI-Japan殿が勝手にやっていることだからどうでもよくて、私も数少ないお休みをつぶしてまで憤慨したり、それに対するブログエントリを書く必要はないのです。ただ「がんばれ」とエールを送るだけですむのです。
その実はPostgreSQL CEであるのに、OSS-DB技術者認定試験と名乗って、あたかもOSS-DBを代表するような名称や、その名称に基づく試験を実施する立場で変な発言をするのはやめていただきたいと切に思います」
最後に「変な発言」の追加と、それへのコメントです。
LPI-Japanが、オープンソースデータベース技術者認定試験を開始
同じくオープンソースベースのデータベースソフトであるMySQLについて成井 弦理事長は、「現在はOracleの配下に入っており、ディストリビューションのリリース時期や仕様を1つの企業が決めるようになるとしたら、OSSとは違うものになる。今後、中立な立場でディストリビューションされるようであればMySQLもやるかもしれない」とコメントした。
ええっ! ということはみんなが使っているFirefoxやRHELも、いま流行のAndroidですら、もしかしてOSSとは違うものになっているんですか!!びっくりしました。 そんな話、OSIのオープンソースの定義ではみたことが無いんですが。そもそもMySQLはメジャーになる前から一つの企業(MySQL AB)がリリース時期や仕様を管理しています。もしかしたら、最初からOSSじゃない? ってそんなわきゃないでしょう。
理事長、まず以下のエントリを読んでください。そして、あなたのOSSの定義を教えてください。
漢(オトコ)のコンピュータ道: 真のオープンソースとは何か?
これまでの発言をみると、あなたの気にいらないソフトウエア(特にMySQL)はOSSではないようにコメントしているようですが、そもそもOSS-DB認定試験がMySQLに対応しないのは、PostgreSQLありきのものだからです。PostgreSQLにしか対応していない、それを突っ込まれた際のコメントとしてMySQLをdisるのはやめてもらえませんか。そして、disった後に「MySQLもやるかもしれない」とかいうのやめましょうよ。。。。
OSS-DB認定試験ほど有名じゃないですが(皮肉です)MySQLにはOracleやSun microsystemsに統合されるずっと前からMySQL認定資格(試験)というものがあります。
MySQL認定資格
これも旧PostgreSQL CEと同様に長きにわたって(MySQLバージョン4.x -> 5.x)工数をかけてきたものです。それをOSS-DB認定試験ではなく、MySQL認定試験としてやっています。MySQLの試験なのであたりまえといえば、当たり前のネーミングです。(しかも、日本ローカルではなくワールドワイドでおこなっています) LPI-Japan殿がOSS-DBという名前を正当化するために、わざわざ車輪の再発明をする必要はないのです。(この点については、
前々回のエントリで細かく書きましたのでご参照ください)
P.S. オープンソースデータベースに言及するときには、時々
FirebirdやApache Derbyも思い出してください。。。。