2010.05.15 Saturday
「プロになるためのWeb技術入門」 ――なぜ、あなたはWebシステムを開発できないのか
「プロになるためのWeb技術入門」 ――なぜ、あなたはWebシステムを開発できないのか
小森 裕介
技術評論社殿から献本いただきました。
本書の多くの部分を著者の体験に基づいて書いているように見受けられます。Webアプリの開発の項目について十分理解した上で簡単に伝える努力をしていて、それがかなり成功している本です。
私自身もWebアプリケーションについては、会社員専業の前職時に初めて本格的に関わり、必要に追われ各種勉強をしました。しかし、ここに書かれていたような内容を俯瞰的に捉え、理解するには結構な工数と時間がかかりました。この本ではこれらが構成にも、分量的にも無理なくまとまっています。その当時にこの本があったら、どれだけ助かったことでしょうか。
特にいままでなにがしかのソフトウエア開発を経験しているけどWebアプリ開発は初めて、という向きには手放しでおすすめです。
....といいつつ、最後に好例の「勝手に校正」しておきます。
やはり職業柄データベース関連にはつっこみをいれたくなるもの、
なので参考にしていただければ幸いです。(かなり細かなつっこみですw)
p.140
「SQLとは「Structured Query Language」の略で」
元々はそうでしたが、現在のSQL標準では標準化の過程で略称とは見なされなくなっていますので「元々は」とかで説明するか、説明自体不要だと思います。
WikipediaのSQLの注やASCIIの標準SQLの背景などご参照ください。
p.140 脚注
「OracleのPL/SQLやPL/pgSQL」
こう書くとPL/pgSQLもOracleのものに思えてしまいます。
「OracleのPL/SQLやPostgreSQLのPL/pgSQL」と書くか、単に
「PL/SQLやPL/pgSQL」でよいと思います。
p.148 コラム 代表的なデータベース製品
【誤】Oracle Database 11g Express Edition
【正】Oracle Database 10g Express Edition
Oracle社のデータベースは確かに11gが最新ですが、Express Editionは10までしかでていません。
「しかし、いずれにせよ非営利団体、教育機関、個人で利用する範囲においては、無償で利用することができます」
この表現はかなり曖昧です。営利団体でもGPLに従っていれば無償で利用できますし、非営利団体、教育機関でも、GPLに従っていなければ商用ライセンスが必要になるからです。そのため、単にこの文章を省くか、次のように書くとよいと思います。
「しかし、GPLの条件に従って利用する範囲においては、無償で利用することができます」
GPLと書いて、同書ではライセンスについての記述がないことに気づきました。関連するものとしてはp.164にコラムとして「現代のWebシステムを支えるオープンソース」というものがありますが、オープンソースのライセンスについては触れていませんね。せっかくなので本書に関係のあるGPL, BSD, Apacheライセンスに軽く触れるといいと思います。(注*44も同様に微妙です)
オープンソースデータベースのライセンスについては、以前にこのエントリでまとめてあります。また最近では、いろいろな使われ方を想定して、以下のように(ある意味)凝ったエントリもありますので、参照してみてください。
オープンソースをライセンス的に正しくつかうための11のチェックポイント(Builder)
[2010-05-29 追記] 筆者のブログとサポートサイトのリンクを追加しました。
こもりん日記
『プロになるためのWeb技術入門』サポートサイト
[2010-07-21 追記] 筆者のエントリとトラックバック設定しました。
「プロになるためのWeb技術入門」発売しました(こもりん日記)